戦後SF事件史---日本的想像力の70年 (河出ブックス)

 いきなり津波だの原発だの言い出す序章が噴飯ものだがまぁ当時は人文系はそういうのが流行っていたのだろう。スルーで。
 海野十三と安倍公房の評価、日本空飛ぶ円盤研究会の内紛と宇宙友好協会への分裂、(何故か)読売アンデパダン、戦記漫画ブームとその撲滅、EXPO'70への文学界の猛反対、ガンダムはSFか論争、ぱふ分裂、コミケット準備会内紛とクーデターからのコミックスクウェア、愛国戦隊大日本事件、太陽風交点事件、おたくvs.新人類、90年代ノベルズブーム、SF氷河期およびクズSF論争、等が取り上げられてて大変面白かった。最後の方の、クズSF論争はまだ当事者が存命で傷も癒えていないのか、他と比べるとサラっとしてる。あと平井和正の改竄とかリアル犬神明とかは何か差しさわりがあるのかも知れん。
 赤瀬川源平の偽千円札事件等々のアングラ演劇は、私はあんまりサイエンスなフィクションのジャンルという感じはしないのだが、まぁ異化作用が似てるということらしい。まぁ筆者の反体制こそ良識だという志向が黙っていなかったという感じ。
 今ではヲタ文化に欠かせぬ要素たる「ロリコン」についてだが、ロリータコンプレックスではなくアリスコンプレックスではないかという

実際「アリス」へのオマージュ作品は多いが、「ロリータ」をモチーフとしたSF・幻想文学は殆ど無いのではないか。

のは成る程なぁ、と思った。

日本のオタク文化の大きな柱となるロリコンは、元々はSF・幻想幻想ファンのこうした「アリス」への論理的興味から来たのではないかと私は考えている。
アリス幻想の根幹にあるのは性的関心よりも非性的関心であり、単なる少女愛好ではなく非日常的なセンスも同時に必須要素として含んでいた。

あとは、Expo'70の子供の参観を巡って文科省日教組が対立していたというのも面白い。左派は国家的イベントは基本反対であり大江健三郎も猛反対してたそうな。んで、協力してた小松左京梅棹忠夫は「進歩的文化人」から体制派として敵視されたり。

戦後SF事件史---日本的想像力の70年 (河出ブックス)